宮本輝は泥の川・蛍川・錦繍を読んで以来のファン。
本を読むことは嫌いではない、むしろ好きな方ではあるが、とにかく世間で売れているからというので買うのが嫌な性分なので自分の直感で本を選ぶ。まあ、5冊に1冊くらいは、すぐ読むのをやめてしまう面白くない本に出くわす。本になるほどだから、どこか身になったり、面白かったりするんだろうが、私にはわかろうとする心はない。もう、嫌いなのは嫌いなのだ。じゃあ、どんな本が嫌いかというと、芸術家らしくみせようとしてる文体でかかれているもの。
作家を気取りたくて、作家として荒稼ぎしたいと思いながら,それが裏にでてるような格好つけたもの。でも宮本輝は違う。文章だ、文体だを論じている暇などないほどにどんどんと文章が映像化していく、感情がどんどん入っていく。最後まで読みきって、ほっと一息。そして「うまいなあ~やられた!」と思う。筋書きを時が経って忘れてしまっても、時々絵が脳裏に浮かんでくる。「錦繍」の時の山、壁に釘付けされたとかげ、大群の蛍、つぶれた蛙、そしていろんな植物がからみあってる古い大木。それらが、まるで私が過去にどこかで見た光景と錯覚してしまうほど、鮮烈な記憶として残っていくのだ。本当に宮本輝は凄い。