長塚京三氏がロンドンでの上演を観て気に入って、翻訳を依頼して舞台化したという「エンバース~燃え尽きぬものら~」を観劇してきました。
昔ながらの非常にオーソドックスな、台詞劇で出演者は3人。友人だという益岡徹と乳母の樫山文枝、そして主人公役の長塚氏だ。
かつて親友だった彼が40年ぶりにたずねてくる。彼は40年前のある日、突然姿を消した。主人公は親友だと思っていた彼が突然消えた理由、その真相を告白させるべく話しはじめる。
主人公は裕福な家柄、そして親友は、芸術家的な才能に恵まれていたものの裕福とは言えない家の出身、そして主人公は妻となる人を親友より紹介され結婚。音楽の好きな貞淑な妻との幸せな日々。ところがある日、親友が狩で自分に銃口を向けて、自分を殺そうとし、が、思いとどまる様子を背後に感じた主人公。親友は、その夜、どこかに消えた。親友の部屋に主人公が家捜しに行くと、そこに自分の妻が現れて、主人公は妻と親友との不倫を動かしがたい事実として受け止めるに至る。
その後、妻とは同じ屋敷内ではあるものの、一切お互いに顔も見ることもなく暮らし、妻はその事件の8年後に死んだ。親友はと言えば、罪の意識から南方に兵隊として赴いていた。
40年後に戻ってきた親友。きっと戻ってくると待ち続けた主人公。親友だからこそ、許したい、許せないという思いの中、孤独に苛まれながらの半生を送った主人公の、ほぼ独白劇に終始した。役者冥利というか、こういうの、役者さんってやりたいんだろうなあ。長台詞で心理劇。
嘘も真実もどうでもいいではないか・・・長い年月、これまで心の中に抱え込んでしまわなければならなかった苦しさはとりもなおさず主人公の生きる力になっていたのかもしれないが・・・何よりも難しいのが自分の心の納め方であり、それには誰も介入できないという事だ。
疑うも信じるも全て自分次第。嘘も真実も、どちらでも・・・そんなの関係なくないですか?
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